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高分子量サンプルの分離 u-PAGEL H
u-PAGEL H
u-PAGEL H は、新規架橋剤の採用により、従来のプレキャストゲルよりも、ポアサイズが大きく、かつ、強度の高いゲルになりました。従来のプレキャストゲルと比較して、泳動試料が目詰まりせずにゲル内に入るため、今まできれいに分離できなかった高分子バンド (200kDa≦) も高解像度に分離できます。また、u-PAGEL H は、新規架橋剤によりもたらされた効果として、優れた機械的強度を備えていることから、低濃度ゲルであっても、染脱色操作、あるいは、ブロッティング操作において、ゲルがやぶれてしまうことが少なくなり、操作性が飛躍的に向上しました。
さらに、新たに開発したゲル緩衝液の採用によって、従来よりも転写効率が向上しました。
製品ラインナップ
広範囲の分子量に対応したグラディエントゲル(4-20%)、高分子タンパク質対応のグラディエントゲル(3-10%)、高分子タンパク質対応の均一ゲル(5%)をそろえました。
ゲル濃度 |
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分画分子量範囲 | 5 ~ 600 kDa | 35 ~ 1,500 kDa | 75 ~ 1,000 kDa |
分子量検量線の直線性 |
上図は有色分子量マーカー EzProtein Ladder を泳動した結果と検量線を示しています。 いずれのゲルも直線性ダイナミックレンジが広いことがわかります。 |
泳動条件
泳動緩衝液 | 泳動条件 | 泳動時間 | ||
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4-20% | 3-10% | 5% | ||
EzRun |
300V c.v. | 30-40 分 | 35-45 分 | 35-45 分 |
150V c.v. | 70-80 分 | 90-100 分 | 90-110 分 | |
20mA/gel c.c. | 75-85 分 | 100-120 分 | 100-120 分 | |
EzRun TG (Tris/Gly) |
20mA/gel c.c. | 65-85 分 | 90-110 分 | 90-100 分 |
仕様
u-PAGEL H (4-20%) | u-PAGEL H (3-10%) | u-PAGEL H (5%) | ||||
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ゲル濃度 | 4-20% グラディエント | 3-10% グラディエント | 5% 均一 | |||
製品名 | UH-T420 | UH-R420 | UH-T310 | UH-R310 | UH-T5 | UH-R5 |
コードNo. | 2331304 | 2331314 | 2331302 | 2331312 | 2331300 | 2331310 |
検体数 最大アプライ量 |
14 24 μL |
18 18 μL |
14 24 μL |
18 18 μL |
14 24 μL |
18 18 μL |
ゲルサイズ | 90mm (W) × 83mm (H) × 1mm (D) | |||||
入数 | 10枚/箱 | |||||
保存温度・使用期限 | 冷蔵・1年間 | |||||
価格 | 25,000 円 |
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新規架橋剤により、ゲルの強度がパワーアップ!
ポリアクリルアミドゲル は、アクリルアミドと架橋剤である N,N'- メチレンビスアクリルアミド(Bis) がラジカル重合により結合した重合体です。アクリルアミドだけでは直鎖状につながっていくだけですが、架橋剤を加えることにより、架橋の役割を果たして網目(三次元)構造を持った重合体(ゲル)ができます。
ゲル濃度が低いほどポアサイズが大きくなるため、高分子タンパク質の分離が可能になります。しかし Bis は溶解度が低いため、Bis 同士が集まる部分ができ、不均一なゲルとなります(左下図)。不均一なゲルは機械的強度※が下がり、もろくやぶれやすいために取り扱いが難しいことが課題でした。
今回アトーは Bis よりも溶解性が高く、結合の手の長い新規架橋剤を用いることで、低濃度であっても、均一なゲルの開発に成功しました(上中図)。Bis の 約1.7倍高い引張破断応力※で、機械的強度が優れています。
またポアサイズが大きくなることで、泳動試料がゲルの網目に目詰まりすることなくスムーズに入り、さらに高い分離能を示します。
こんなに引っ張ってもやぶれません!
新規架橋剤を用いたゲルは、Bis を用いたゲルに比べて、引張破断ひずみ※が 約1.7倍高く、やぶれにくいことが特長です。
染脱色操作やブロッティング操作において、ゲルの取扱いが格段にしやすくなりました。
★ 動画もご覧ください!
※強度を説明するためにゲルを引っ張っています。操作時には丁寧に扱ってください。
高分子領域の分画範囲が広い!
上図は、高分子量マーカーを 5% の u-PAGEL H (UH-T5) と従来品の PAGEL (NPU-5L)、Laemmli法に準拠したゲルで泳動した結果および画像解析ソフト CS Analyzer 4 で解析した検量線を示しています。
検量線から u-PAGEL H は、PAGEL よりも移動度が大きく、u-PAGEL H (②) と PAGEL (①) の矢印の長さの違いから、高分子領域の分離範囲が広いことが確認できます。
一方 u-PAGEL H は、Laemmli法に準拠したゲルと同等の移動度および高分子量分離範囲を示します。
高分子バンドがこんなにシャープに!
上図は、3-10% の u-PAGEL H (UH-T310) と他社高分子用既製ゲルにより泳動した結果を示しています。ゲル内の橙色枠で囲まれた Collagen抽出液 のレーンを拡大してゲルの右側に示しました。
u-PAGEL H は、他社ゲルに比べて、バンドがスメアにならず、シャープに分離されることが確認できます。
Collagen抽出液のレーンを比較すると、β11 と β12 がシャープに分離されており、γ のバンドも明瞭に確認できるうえ、さらに高分子領域のバンドもはっきりと視認できます。
さらに u-PAGEL H (①) は、他社ゲル (②) の約半分の時間で高速泳動をしても、低分子から高分子に至るまで、バンドがシャープに分離できることがわかります。
4-20%なら低分子領域の分離もバッチリ!
上図は、4-20% の u-PAGEL H (UH-T420) と従来品の 5-20% の PAGEL (NPG-520L)、他社既製ゲルを泳動して比較した結果を示しています。さらにゲル内の橙色枠で囲んだ低分子用分子量マーカー EzStandard LMW のレーンを拡大して示しました。
他社ゲル (③) は 1kDa のバンドがスメアで不明瞭なのに対して、u-PAGEL H (②) は、1kDa まで明瞭に分離できることが示されました。
さらに従来品の約半分の時間で高速泳動をしても、緑色で囲まれた HeLa抽出液が明瞭なバンドに分離されており、他社ゲル (③) よりも良好なパターンが得られることがわかります。
1年間保存したゲルでも安定したデータが得られる!
上図は、3-10% の u-PAGEL H (UH-R310) の保存安定性試験のデータです。ポリアクリルアミドゲルの場合、おおよその目安ですが、37℃で1日の加温処理は4℃保存時の 約1か月に相当するといわれています。UH-R310 の泳動パターンからは、37℃で4週間加温処理後も、シャープなバンドが分離できることが確認できました。また有色分子量マーカー EzProtein Ladder の移動度が、保存期間によって変化することなく、長期保存しても良好な泳動パターンが得られることが確認できます。したがって、4℃保存で少なくとも1年間は品質が安定であるといえます。
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セキュリティ対応ソフトウェア |
500kDa 以上のセミドライブロッティング
上図は、ニワトリ筋抽出液を 5% の u-PAGEL H (UH-T5) で分離し、EzFastBlot HMW、EzFastBlot、および QBlot kit を使用して PVDF膜 に転写し、ウェスタンブロッティングを行った結果を示しています。
EzFastBlot HMW により転写したブロットが最も効率よく高分子タンパク質が転写され、Nebulin と Titin のバンドが明瞭に検出されることが確認できます。
このように u-PAGEL H は、Nebulin や Titin のような 500kDa 以上の高分子タンパク質も良好に分離するのに最適なうえ、ウェスタンブロッティングで効率よく転写して高分子タンパク質のバンドを検出することができます。
★ 低濃度ゲルのセミドライブロッティングのコツをご紹介しています。ぜひご覧ください!
EzLabel FluoroNeoによる検出
EzLabel FluoroNeo により蛍光標識した細胞抽出液を u-PAGEL H (UH-R310) で分離し、EzFastBlot HMW により転写して、ウェスタンブロッティングを行った結果を示しています。
上図は泳動後に EzStainAQua で染色したゲル(左)と EzLabel FluoroNeo で蛍光検出したゲル(右)を比較しました。どちらの手法でも感度良くバンドが検出されることが確認できます。
さらに泳動後のゲルをウェスタンブロッティングした結果をゲルの下側に示しました。CA19-9、CD66 の発現は大腸がん細胞由来の Colo205 細胞抽出液のみで、Transferrin の発現は肝がん細胞由来の HepG2 細胞抽出液のみで確認されました。一方、SMAD2 はすべての細胞株で発現していることが確認できました。また CA19-9 のシグナルは、約200-400kDa のバンドとは別に、さらに高分子の 約800kDa の高分子バンドも良好に検出されることが示されました。
このように u-PAGEL H は蛍光検出にも適しており、500kDa 以上の高分子タンパク質を良好に分離し、ウェスタンブロッティングで効率よく転写してバンドを検出することができます。
Native-PAGE
u-PAGEL H は高分子タンパク質を Native PAGE により分離する方法にも適しています。上図は、3-10%(UH-T310)、5%(UH-T5)、4-20%(UH-T420)の u-PAGEL H を使用し、様々なタンパク質を泳動分離した結果です。電極液は EzRun TG (Tris-Glycine buffer) を使用し、100Vの定電圧で泳動しています。特に UH-T310 を使用すると、20kDa から 1200kDa 以上の広範囲の分子量のタンパク質を分離することができます。
タンパク質の活性検出(Native-PAGE)
上図は、β-Galactosidase の活性染色をした結果を示しています。3-10% の u-PAGEL H (UH-T310) で Native-PAGE により分離しました。電極液は EzRun TG を使用し、20mA の定電流で泳動しました。泳動終了後、発色基質 (X-gal) による活性染色および EzStain AQua で検出しました。
4-20% の u-PAGEL H (UH-T420) で Native-PAGE により分離した後、GFP の蛍光検出をした結果を示しました。泳動後のゲルはガラスプレートから取り出さずに BlueLED で励起し、535nm バンドパスフィルターで検出、WSE-6300 Luminograph Ⅲ で撮影しました。蛍光検出後のゲルを銀染色した結果を下側に示しています。
DNAの電気泳動
上図は、UH-T5 と UH-T420 で DNA の電気泳動を行った結果と、比較として 1% アガロースゲルで電気泳動した結果を示しました。u-PAGEL H は DNA の分離にも適しています。とくに橙線枠で示した 1kbp以下のバンドが、アガロースゲルよりも明瞭に分離できることが確認できます。
さらに右上図には黄線枠で示した 1.5~3.0kbp の範囲を拡大して示しました。1.5kbpのバンドはアガロースゲルでは 1本に分離されていますが、u-PAGEL H を使用すると 2本の明瞭なバンドに分離できることが確認できます。
染色方法の違い
上図は、 4-20%(UH-T420)の u-PAGEL H を使用し、タンパク質を泳動分離した後に検出した結果です。左から、CBB染色試薬の EzStain AQua、銀染色試薬の EzStain Silver、ネガティブ(リバース)染色試薬の EzStain Reverse で染色しました。どの方法でもバックグラウンドの向上や染色ムラなく、明瞭にバンドを検出できます。
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PAGELⓇ シリーズ の歴史
PAGELⓇ シリーズ 製品ラインナップ
高分子タンパク質や低分子タンパク質に特化した最新のゲルや、グラディエントゲルなど、幅広いラインナップをご用意しております。
さまざまな濃度に対応しており、使い勝手の優れたミニサイズ、サンプルやバッファーの節約にもオススメのコンパクトサイズ、多検体処理にオススメのワイドサイズより、ゲルサイズをお選びいただけます。
※上図は、有色分子量マーカー EzProtein Ladder を電気泳動にて分離した際の移動度の模式図です。それぞれの数値は、各バンドの kDa を示しています。
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