Home > Technical Info > 電気泳動 > 電気泳動ゲルのタンパク質の染色

電気泳動
電気泳動ゲルのタンパク質の染色
概要 実験方法(CBB染色) 実験方法(銀染色) 実験方法(リバース染色) 参考データ 関連製品 ダウンロード
1.概要
電気泳動はタンパク質固有の電荷や分子量の違いを利用して、電気で各分子を分離する手法です。一般的にアクリルアミドなどから成る透明のゲルを使ってタンパク質のバンドを分離しますが、そのままではバンドを確認することはできません。そこで、クーマジーブリリアントブルーなどの色素染色や、写真現像の原理を応用した銀染色などによりバンドを視覚化し、分子量の概算や発現量の比較などを行います。 今回はアトーの製品を使用したゲル染色に関してご紹介します。
2.クーマジーブリリアントブルー(CBB)染色
CBB 染色は安価で簡便な方法であり、定量的に染色されるため、もっともよく使用されるゲル染色法の一つです。検出限界は 10 ~ 100ng/ バンドです。染色原理は色素とタンパク質のアミノ基が電気的に結合したり、非共有的にファンデルワールス力により相互作用することによるといわれています。アトーの EzStain AQua はアルコールや酢酸を使用せず、脱色には蒸留水が使用できるため、簡便なうえに環境に配慮した染色方法です。検出感度も一般的な CBB 染色法と比べて 3 ~ 5 倍高く、バンド以外の部分が染色されにくいため、短時間でバンドを確認することができます。
2-1.実験方法
実験材料
- 電気泳動後のゲル
- EzStain AQUA(AE-1340)
- 蒸留水、容器、電子レンジ等
実験ステップ | |
---|---|
|
EzStain AQuaで染色する場合は、目的タンパク質のバンドが数十ng以上になるように、アプライするタンパク質量を調整します。電気泳動後のゲルは放置せず、直ちに染色液に浸漬します。 低分子を染色する場合は固定液(40% メタノール、10% 酢酸溶液)で30分以上固定してしてください。 |
| |
|
EzStain AQuaをゲルサイズよりも大きいタッパーに注ぎ、電気泳動後のゲルを溶液に浸漬します(~50mL/ゲル)。 室温で3時間以上染色します。 ※迅速染色する場合は、電子レンジで30~60秒(40℃くらいになるまで)温めます。室温で30分以上染色します。 |
| |
|
EzStain AQuaを廃棄し、蒸留水で2回すすぎます。新たに十分量の蒸留水を添加して脱色します(~100mL/ゲル)。 ※迅速脱色する場合は、電子レンジで30~60秒(40℃くらいになるまで)温めます。室温で30分以上脱色します。 |
3.銀染色
銀染色法は呈色法では最も感度よくタンパク質を染色する方法です。一般的に検出限界は100pg~1ng/バンドです。検出感度は優れていますが、ゲル表面のタンパク質だけが染色されるうえに、すぐに染色が飽和するため定量性が乏しいといわれています。タンパク質の固定にグルタルアルデヒドを使用すると、染色途中でタンパク質が修飾されてしまうため、質量分析等には適しません。アトーのEzStain Silverは試薬調製が容易なうえに、約1時間で染色操作が終了する迅速で簡便な方法です。DNAの染色にも使用でき、もちろん質量分析にも適した染色方法です。
3-1.実験方法
実験材料
- 電気泳動後のゲル
- EzStain Silver(AE-1360)
- メタノール
- 酢酸
- 蒸留水
- マイクロピペット
- メスシリンダー
- 容器等
実験ステップ | |
---|---|
|
下記4種類の試薬を調製します(即時調製)。
・固定液 : 1% S-1溶液、50% メタノール、10% 酢酸 |
|
電気泳動後のゲルを固定液に浸漬し、10分間インキュベーションします。 ※EzStain Silver で検出する場合は、目的タンパク質のバンドが数百pg以上になるようにします。 |
|
固定液を廃棄し蒸留水で10分間×2回、洗浄します。 ※サンプルバッファーにDTTが添加されている場合は、蒸留水の代わりに30%メタノール溶液で洗浄します。 |
|
蒸留水でさらに10分間洗浄した後、染色液を添加し、5分間インキュベーションします。 ※染色液は重金属廃液として処理してください。ゲルが厚い場合は時間を延長します。 |
|
蒸留水で軽くリンスした後に、発色液を半量添加して30秒間インキュベーションします。発色液を廃棄し、残りの発色液に置換して、発色されるまでインキュベーションします。 |
4.リバース(ネガティブ)染色
リバース染色法はタンパク質のバンドは透明なままで、バンド以外のゲル部分(バックグランド)が白く染色される検出方法です。検出限界は1 ~10ng/バンドです。ゲル内のSDSなどの塩と染色液中の金属イオンが結合して沈殿するため、タンパク質バンド以外の部分が白濁します。タンパク質自体は染色の影響をほぼ受けません。
アトーのEzStain Reverseは試薬調製が容易なうえに、約30分間で染色操作が終了する迅速で簡便な方法です。DNAの染色にも使用でき、もちろん質量分析にも適した染色方法です。
4-1.実験方法
実験材料
- 電気泳動後のゲル
- EzStain Reverse(AE-1310)
- メタノール
- 蒸留水
- メスシリンダー
- 容器等
実験ステップ | |
---|---|
|
下記4種類の試薬を調製します(即時調製)。
・前処理液 : 10% メタノール/100mL |
|
電気泳動後のゲルを前処理液に浸漬し、5分間インキュベーションします。 |
|
蒸留水で30秒間洗浄した後に、染色液を添加し、10∼15分間インキュベーションします。 ※染色液は重金属廃液として処理してください。ゲル濃度が高い場合は染色時間を延長します。 |
|
蒸留水で30秒間洗浄した後に、発色液を添加して1∼3分間インキュベーションします。 ※黒い紙の上などで発色するとバンドが見やすくなります。 |
|
発色液を廃棄し、蒸留水を添加して2分間×2回インキュベーションし、発色を停止します。 |
参考データ
実験例1 CBB 染色法の比較
上図はヒトトランスフェリンタンパク質を400ng/レーンからの1/2希釈系列で泳動し、EzStain AQuaおよび一般的なCBB染色でゲルを染色した結果です。
EzStain AQuaは電子レンジを使用すると、約10分でバンドが確認できるようになり(A)、一晩染色してもバンド以外の部分が染色されないため、脱色なしでバンドを確認できます(B)。さらに脱色後は一般的なCBB染色法の検出限界が25ng/レーン(F)なのに対し、その約1/4の6.2ng/レーン(C)まで検出することができます。一方、一般的なCBB染色法は染色後10分ではバンドが確認できず(D)、一晩染色するとバンド以外の部分も一様に呈色されるため、やはりバンドを確認できません(E)。このようにEzStain AQuaは、簡便な使用方法である上に、迅速にかつ感度よくバンドを検出できるエコロジーなCBB染色液です。
実験例2 染色法の比較
上図はヒトトランスフェリンタンパク質を400ng/レーンからの1/2希釈系列で泳動し、アトーのゲル染色試薬で染色した結果です。
EzLabel FloroNeoはサンプル調整時に蛍光標識しており、ゲル染色はしていません。このようにゲルの染色方法により、検出感度が異なります。
関連製品
WSE-1150 PageRun Ace (パジェランエース)
|
高速泳動対応の電源付き電気泳動槽です。 |
WSE-3100 PowerStation Ghibli Ⅰ (パワーステーション ギブリⅠ)
|
業界初のタッチパネル式電源装置です。大きなカラー液晶画面で、見やすい表示と簡単操作! |
WSE-6300 LuminoGraphⅢ (ルミノグラフⅢ)
|
解像力の高い6M CCDカメラと世界最高峰の明るさ「F0.8」を誇るレンズを搭載した、タッチパネル式ケミルミ撮影装置です。 |
WSC-2400 シーソーシェーカーatto
|
ゲルやブロッティング膜の染色・脱色・反応などで、ムラなく振とうするメトロノーム方式シェーカーです。
|
ダウンロード
アプリケーションノート 電気泳動~ゲルの染色~
このページのPDF版です。
「高速ハイレゾ電気泳動」カタログ
アプリケーションカタログ
|
簡単に効率よく実験をするために、また信頼性の高いデータを得るために、役立つ情報をまとめたアプリケーションカタログです。ぜひ、ご一読ください。 |