テクニカルインフォメーション
2次元電気泳動の原理と方法
2次元電気泳動の原理
2次元電気泳動とは、タンパク質を2次元、つまりX方向とY方向に2回電気泳動(展開)する分離方法です。
この時1回目と2回目に異なった分離条件(試料や電気泳動の条件)を組合わせ、1次元(1回)の電気泳動より分離能を優れたものにします。
その結果、X方向への分離、展開+Y方向への分離・展開を1枚のゲル中に得られます。
一般的には1次元目(X方向への分離)は各試料の等電点によって分離(IEF/等電点電気泳動)し、2次元目(Y方向への分離)は各試料の分子量によって分離(SDS-PAGE)し、展開します。
1次元目:等電点電気泳動(IEF)
タンパク質、ペプチドを構成するアミノ酸はアミノ基(-NH2)やカルボキシル基(-COOH)等を有する両性電解質のため、溶解している液のpHにより電荷の大小や極性が変化します。
そこでpH勾配中で電気泳動を行なうと、各タンパク質は固有の電荷に応じて陰極(-)と陽極(+)に引かれて移動しますが、等電点に達し電荷が0になると移動しなくなります。
このように各タンパク質、ペプチド固有の等電点を利用して分離する方法を等電点電気泳動といいます。
ゲル(支持体)はアガロースやポリアクリルアミドが利用され、2次元目のゲルの上に1次元目のゲルを添加するため円柱や矩形の形状のゲルを使用します。
2次元目:SDS-PAGE
タンパク質やペプチドは、構成アミノ酸や溶けている緩衝液のpHによってプラス(+)にもマイナス(-)にも荷電します。
SDS-PAGEは、陰イオン性界面活性剤であるSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)をタンパク質に結合させ、タンパク質を一過性にマイナス(-)に荷電させて陽極(+)側に移動させる電気泳動の方法です。
この時タンパク質は、平板状のポリアクリルアミドゲル中でゲルの分子ふるい効果で分子量に応じた移動度を示し、分離されます。
2次元電気泳動の操作イメージ
試料調製
まず十分に溶解していることが大事です。遠心で十分に不溶物質を除去します。
1次元目は等電点電気泳動ですので、試料溶液中にはなるべく試料(タンパク質・ポリペプチド)以外のものが存在しないのが理想です。
塩や極性をもった界面活性剤等は含まないようにし、極端なpHも好ましくありません。
試料が水溶性の場合はそれほど問題になりませんが、難溶性の場合には非イオン性か両性の界面活性剤や尿素などで溶解度をあげます。
アトーの2次元電気泳動用サンプル調整キット(EzApply 2Dkit, 左写真)は、タンパク質を水溶性と疎水性分画に分けて効率良く抽出することができます。
還元剤、アルキル化剤、洗浄バッファー、 重層液がキットに付属されています。
操作イメージ
ディスクランAce(等電点電気泳動用装置)の使用方法
製品ラインナップ
ゲルの大きさ(泳動の目的、試料の分離度、操作時間)によって選択します。
2次元目ゲルサイズ(展開サイズ) | 所要時間 | 既製ゲル | 特長 | |
---|---|---|---|---|
2Dコンパクトシステム | 60(W)×60mm(H) | 約6時間 | 1D:アガーゲル 2D:c・パジェルHR |
速い、小さい |
2Dミニスラブシステム | 90(W)×83mm(H) | 約9時間 | 1D:アガーゲル 2D:e・パジェル |
標準サイズ |
2Dコンパクトシステム 1日で終わる2次元電気泳動
電気泳動装置(電源一体型) | プレキャストゲル(既製ゲル) | 試薬 | |
---|---|---|---|
一次元目(等電点電気泳動) | |||
二次元目(SDS-PAGE) |
2Dミニスラブシステム 1日で終わる2次元電気泳動
電気泳動装置(電源一体型) | プレキャストゲル(既製ゲル) | 試薬 | |
---|---|---|---|
一次元目(等電点電気泳動) | |||
二次元目(SDS-PAGE) |
※上表には電源搭載の電気泳動槽をご紹介しておりますが、電源装置と泳動槽(電源未搭載)を接続して電気泳動することも可能です。各製品のWebページを参照ください。
※1次元目等電点電気泳動にディスク泳動槽を使用する場合は、電源装置は0mAでも出力出来る仕様のものをご利用ください。
※1次元目、2次元目ともにゲルを自作する場合はゲル作製キットがあります。各製品のWebページを参照ください。