テクニカルインフォメーション

セミドライブロッティング試薬の選び方

アトーでは、目的に合わせたさまざまなセミドライブロッティング試薬をそろえております。特長別に各製品をご紹介します。

    トランスファーパック セミドライブロッティング試薬     タンク式ブロッティング試薬
型式 WSE-4056/57/58  WSE-7210 AE-1465 AE-1460  WSE-7055
名称 QBlot kit C/M/W EzFastBlot HMW EzFastBlot EzBlot EzRun TG
操作性 ★★★★★ ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★☆☆☆ ★★☆☆☆
転写時間 ★★★★★ ★★☆☆☆ ★★★★★ ★★☆☆☆ ★☆☆☆☆
転写効率 ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★
高分子タンパク質 ★★★★☆ ★★★★★ ★★☆☆☆ ★★★☆☆ ★★★★★
分子量範囲 ~250kDa ~600kDa 低分子~200kDa ペプチド~250kDa 低分子~200kDa
最短転写時間

5分(24V)

30分(25V)

10分(6mA/cm2 or 25V)

30分(2mA/cm2

60分(高電圧)

セミドライブロッティングとは

ブロッティング法は、目的成分を特異的に高感度で検出するためタンパク質やDNA、RNA の基本的な研究手法として広く利用されています。
DNAを膜(メンブレン)に移し、検出する方法がサザンブロッティング(SouthernBlotting)、
タンパク質を膜(メンブレン)に移し、検出する方法がウエスタンブロッティング(Western Blotting)と呼ばれています。

 

Blotting_1.jpg ウエスタンブロッティングには大きく分けてセミドライ式とウェット式(タンク式)の2種類の方法があります。
セミドライ式ブロッティングとは、平らな電極板の間にブロッティング溶液を含ませたろ紙、膜(メンブレン)、電気泳動後のゲルを積層して密着させ、
電気を流してゲル中の試料を膜上に移行させる手法です。
セミドライ式ブロッティングは、ブロッティング溶液をろ紙に含ませるだけなので、タンク式に比べて少量の溶液量で行うことができます。
また過電流や発熱の心配も少ないので、冷却装置などが必要ありません。
アトーではこのような特長を基に、セミドライ式を推奨しています。
参考データ

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上図は様々なアトーのトランスファーバッファーを用いてブロッティングを行った後のブロッティング膜とゲルをEzStain AQua (CBB)で染色した結果です。
EzRunTG(従来のTowbin 法によるトランスファーバッファー)よりもEzBlotEzFastBlotEzFastBlot HMW はセミドライ式でも高効率にタンパク質バンドをトランスファーできます。
EzFastBlot は約10 分の短時間で、~ 200kDa までのタンパク質をトランスファーするのに適しており、EzFastBlot HMW は200kDa 以上の高分子タンパク質も約30 分間という短時間で、タンク式のブロッティングと同等以上の効率でトランスファーできます。またEzBlot はタンパク質をシャープなバンドで明瞭にトランスファーするのに適しています。

セミドライブロッティングの基本操作

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1.ブロッターの下部電極板にブロッティング溶液を染み込ませたろ紙をセットします。

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2.ろ紙の上に親水化・平衡化済みのPVDF膜をセットします。

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3.PVDF膜の上にゲルをセットします。

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4.ゲルの上にブロッティング溶液を染み込ませたろ紙をセットします。ろ紙の上から、ブロッティングローラーを転がせ、過剰なブロッティング溶液を取り除き、密着させます。

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5.通電し、ブロッティングを開始します。

簡単!失敗なし!トランスファーパック QBlot kitシリーズ

   

QBlot-Flyer_181218.jpg QBlot_2.1.jpg

QBlot kit シリーズは、セミドライブロッティング溶液で調製済みのPVDF膜とパットをセットでパックしたトランスファーパックです。
1回分のパックの封を切り、電気泳動後のゲルをのせればすぐにブロッティングが可能です。
通常、ウエスタンブロッティングのろ紙やメンブレンは、ブロッティングバッファーになじませる平衡化作業が必須です。これには15~30分程度の時間を要します。
QBlot kit シリーズなら面倒な平衡化は必要なく、封を切ればすぐにウエスタンブロッティングに使用可能です。
専用ブロッティングバッファーにより転写効率も高く、短時間で高効率のウエスタンブロッティングが可能です。
また専用の給水パットを使用しているため、転写ムラや気泡ぬけの失敗も少なく、どなたでも簡単に使用することができます。

参考データ

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上図は2.2ng/レーン~2/3希釈したヒト血漿タンパク質を電気泳動し、QBlot kit M(改良品)とQBlot kit(旧製品)、EzFastBlot(ろ紙+高速転写バッファー)を用いてウエスタンブロッティングを行った結果を示しています。転写したブロッティング膜を1/10,000希釈したヒトアルブミン抗体と反応させ、EzWestLumi plusでバンドを検出しました。
QBlot kit MEzFastBlot(ろ紙+高速転写バッファー)の半分の転写時間で同等の検出が、また同じ転写時間では、より高感度な検出が可能になりました。

QBlot kit 使用方法
実験材料

電気泳動後のゲル、QBlot kit M(WSE-4057)、ホライズブロット2M(WSE-4025)、パワーステーションギブリⅠ(WSE-3100)、蒸留水、メスシリンダー、容器など

   

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1.Gel Wash Buffer を蒸留水で 5 倍希釈し、1× Gel Wash Buffer を調製します。

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2.QBlot kit M の Bottom Stackを取り出します。

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3.Bottom Stackをホライズブロットの陽極板の上にセットします。

QBlot_7.jpg
4.電気泳動後のゲルを、1× Gel Wash Buffer で軽くすすぎ、Bottom Stack の上にセットします。

QBlot_8.jpg
5.Top Stack をゲルの上に積層します。

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6.ブロッティングローラーで気泡をぬき、しっかり密着させます。

QBlot_10.jpg
7.ホライズブロット2Mの上部電極板をセットします。

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8.リード線を接続し、
パワーステーションギブリⅠとつなげます。下記の表を参考に条件を設定し、ブロッティングを開始します。

QBlot kit M ​​​​​​ 通電条件 

標準(定電圧)

12V c.v.(電流値目安:100~400mA)、15~30分

標準(定電流)

250mA/gel c.c.(電圧値目安:5~15V)、15~30分

高速(定電圧)

24V c.v.(電流値目安:500~800mA)、5~10分

高速(定電流)

600mA/gel c.c(電圧値目安:15~25V)、5~10分

高分子タンパク質を高速転写するなら EzFastBlot HMW

HMW_1.jpg EzFastBlot HMWは、200kDa 以上の高分子量タンパク質を高速ブロッティングできるセミドライブロッティング試薬です。
使いやすい1液系でメタノールを使用しない組成のため、廃液処理に手間がかかりません。
参考データ

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上図はEzFastBlot HMW と自作の転写バッファー(100mM Tris / 192mM Glycine / 10% MeOH)を用いてブロッティングを行った後のブロッティング膜を染色した結果です。
自作転写バッファーに比べてEzFastBlot HMWでは240kDa 以上の高分子側バンドが濃く転写されていることが確認できました。
このようにセミドライ式でもタンク式と同等の転写効率の高さが確認できました。

EzFastBlot HMW 使用方法
実験材料

電気泳動後のミニサイズゲル、EzFastBlot HMW(WSE-7210)、ホライズブロット2M(WSE-4025)、パワーステーションギブリⅠ(WSE-3100)、アブソーベントペーパー 85×90mm(CB-09A)6枚、クリアブロット P+膜 85×90mm(WSE-4051)1枚、蒸留水、メスシリンダー、容器など

 

HMW_3.jpg
1.EzFastBlot HMW を蒸留水で 5 倍希釈し、ワーキング溶液(ブロッティングバッファー)を調製します。

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2.PVDF膜の親水化、平衡化を行います。
親水化PVDF膜より一回り大きい容器に数mLのメタノールを入れます。そこにPVDF膜を入れて約10秒間浸漬します。
平衡化:別の容器に、ブロッティングバッファーを約50mL 準備し、メタノールから引き上げた膜を入れて、5~15分間振とうします。はじめは膜が浮きやすいので注意し、PVDF膜を完全に溶液中に浸すよう振とうします。

HMW_5.jpg
3.ろ紙より一回り大きい容器を用意し、ブロッティング バッファーを約 50mL 入れ、CB-09A(ろ紙)を 6枚浸漬します。
※他社ろ紙を用いる場合は、ゲルと同じサイズに切断し、合計で約 6mm 厚以上となる枚数を準備します。上図のように、ろ紙、PVDF膜、ゲルを積層します。

HMW_6.jpg
4.ブロッティングバッファーに浸漬した 3枚のCB-09A(ろ紙)を、
ホライズブロット2Mの陽極板の上にセットします。その上に、親水、平衡化済みのPVDF膜をセットします。

HMW_7.jpg
5.電気泳動後のゲルをブロッティングバッファーで軽くすすぎ (数分以内)、PVDF膜の上にセットします。

HMW_8.jpg
6.ブロッティングバッファーに浸漬した 3枚のCB-09A(ろ紙)を、
ホライズブロット2Mの陽極板の上にセットします。ブロッティングローラーで気泡をぬき、しっかり密着させます。

HMW_9.jpg
7.ホライズブロット2Mの上部電極板をセットします。

HMW_10.jpg
8.リード線を接続し、
パワーステーションギブリⅠとつなげます。下記の表を参考に条件を設定し、ブロッティングを開始します。

※ミニサイズゲル1枚の場合の通電条件(WSE-4025/4045以外のブロッティング装置は販売終了しています)

型式 WSE-4020/4025 WSE-4040/4045 AE-6687 AE-6688
名称 ホライズブロット2M-R/2M ホライズブロット4M-R/4M ホライズブロット2M ホライズブロット4M
最大電流 1A 1.2A
使用ろ紙枚数 3枚×2 3枚×2 3枚×2 3枚×2
通電条件 定電圧 定電圧 定電流 定電流
高速法(15~30分) 25V 25V 450mA 450mA
従来法(30~60分) 12V 12V 144mA 144mA

短時間で転写を終わらせたい!高速転写するなら EzFastBlot

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EzFastBlotは、セミドライブロッティング時間を大幅に短縮可能な高速ブロッティング試薬です。
使いやすい1液系で、メタノールを使用しない組成のため、廃液処理に手間がかかりません。

参考データ

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上図は125ng/レーン~1/2希釈したヒト血漿タンパク質を電気泳動し、EzFastBlotと、自作の転写バッファー(100mM Tris / 192mM Glycine / 10% MeOH)を用いてウエスタンブロッティングを行った結果を示しています。
転写したブロッティング膜を 1/4,000 希釈したヒトトランスフェリン抗体および 1/10,000 希釈したHRP標識2次抗体と反応させ、EzWestLumi plusでバンドを検出しました。
EzFastBlot は自作の転写バッファーに比べ、短時間で高効率の転写が可能であることが確認できました。

EzFastBlot 使用方法
実験材料

電気泳動後のミニサイズゲル、EzFastBlot(AE-1465)、ホライズブロット2M(WSE-4025)、パワーステーションギブリⅠ(WSE-3100)、アブソーベントペーパー 85×90mm(CB-09A)4枚、
クリアブロット P+膜 85×90mm(WSE-4051)1枚、蒸留水、メスシリンダー、容器など

          

FB_3.jpg
1.EzFastBlotを蒸留水で 10 倍希釈し、ワーキング溶液(ブロッティングバッファー)を調製します。

FB_4.jpg
2.PVDF膜の親水化、平衡化を行います。
親水化PVDF膜より一回り大きい容器に数mLのメタノールを入れます。そこにPVDF膜を入れて約10秒間浸漬します。
平衡化:別の容器に、ブロッティングバッファーを約50mL 準備し、メタノールから引き上げた膜を入れて、5~15分間振とうします。はじめは膜が浮きやすいので注意し、PVDF膜を完全に溶液中に浸すよう振とうします。

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3.ろ紙より一回り大きい容器を用意し、ブロッティング バッファーを約 50mL 入れ、CB-09A(ろ紙)を 4枚浸漬します。
※他社ろ紙を用いる場合は、ゲルと同じサイズに切断し、合計で約 4mm 厚以上となる枚数を準備します。
※ご使用になるブロッティング装置により、ろ紙の枚数が異なります。取扱説明書をご覧ください。上図のように図のように、ろ紙、PVDF膜、ゲルを積層します。

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4.ブロッティングバッファーに浸漬した 2枚のCB-09A(ろ紙)を、
ホライズブロット2Mの陽極板の上にセットします。その上に、親水、平衡化済みのPVDF膜をセットします。

FB_7.jpg
5.電気泳動後のゲルをブロッティングバッファーで軽くすすぎ (数分以内)、PVDF膜の上にセットします。

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6.ブロッティングバッファーに浸漬した 2枚のCB-09A(ろ紙)を、
ホライズブロット2Mの陽極板の上にセットします。ブロッティングローラーで気泡をぬき、しっかり密着させます。

FB_9.jpg
7.ホライズブロット2Mの上部電極板をセットします。

FB_10.jpg
8.リード線を接続し、
パワーステーションギブリⅠとつなげます。以下の表を参考に条件を設定し、ブロッティングを開始します。

※ミニサイズゲル1枚の場合の通電条件(WSE-4025/4045/4115以外のブロッティング装置は販売終了しています)

型式 WSE-4020/4025 WSE-4040/4045 WSE-4115 AE-6687 AE-6688
名称 ホライズブロット2M-R/2M ホライズブロット4M-R/4M パワードブロットエース ホライズブロット2M ホライズブロット4M
最大電流 1A 1.2A
使用ろ紙枚数 2枚×2 2枚×2 2枚×2 3枚×2 3枚×2
通電条件 定電圧 定電圧 定電圧 定電流 定電流
高速法(15~30分) 20~25V 20~25V RAPID 450mA 450mA
従来法(30~60分) 12V 12V STD 144mA 144mA

より高い効率を求めるなら EzBlot

EzBlot_productmain(240202).jpg EzBlotは3溶液系のブロッティング試薬で、効率の高い転写が可能なブロッティング試薬です。
低分子から高分子に至るまで、効率の高い転写が可能です。
不連続系のバッファー組成のため、一般的に転写されにくいと言われる塩基性タンパク質や複合タンパク質も、効率よく転写することができます。
参考データ

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上図は分子量マーカーとタンパク質を電気泳動し、EzBlot を用いてセミドライブロッティングした膜とタンク式ブロッティングをした膜を染色した結果です。
枠で囲んだ部分の分子量マーカー EzProtein Ladder が低分子から高分子に至るまですべてのバンドが抜けることなく転写できていることがわかります。
このようにEzBlot を用いると、セミドライ式でもタンク式と同等の転写効率の高さを得ることができます。

EzBlot 使用方法
実験材料


電気泳動後のミニサイズゲル、EzBlot(AE-1460)、ホライズブロット2M(WSE-4025)、パワーステーションギブリⅠ(WSE-3100)、アブソーベントペーパー 85×90mm(CB-09A)6枚、
クリアブロット P+膜 85×90mm(WSE-4051)1枚、蒸留水、メスシリンダー、容器など

              

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1.使用時に ブロッティングバッファー A、B、C液のボトル1本に対してメタノールを25mLずつ添加します。
メタノール添加後はラベルのチェックボックスにチェックを入れ、冷蔵保存してください。
メタノールを添加すると1×ワーキング溶液(ブロッティングバッファー)となりますので、そのままご使用ください。
 

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2.PVDF膜の親水化、平衡化を行います。
親水化PVDF膜より一回り大きい容器に数mLのメタノールを入れます。そこにPVDF膜を入れて約10秒間浸漬します。
平衡化:別の容器に、ブロッティングバッファー B液を約50mL 準備し、メタノールから引き上げた膜を入れて、5~15分間振とうします。はじめは膜が浮きやすいので注意し、PVDF膜を完全に溶液中に浸すよう振とうします。

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3.付属のディスポーザブルトレイを2枚用意し、ブロッティングバッファー A、C液を各50mLずつ入れます。各トレイにろ紙を浸漬します。ろ紙の枚数は以下の通りに浸漬してください。
ブロッティングバッファー A液:2枚
ブロッティングバッファー B液:1枚(PVDF膜と同じトレイに浸漬します)
ブロッティングバッファー C液:3枚
上図のように、ろ紙PVDF膜、ゲルを積層します。

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4.ブロッティングバッファー A液に浸漬した 2枚のろ紙をホライズブロットの陽極板の上にセットします。
その上に、ブロッティングバッファー B液に浸漬した 1枚のろ紙をセットします。
その上に、親水化してブロッティングバッファー B液で平衡化したPVDF膜ろ紙の上にセットします。

Blot_6.jpg
5.電気泳動後のゲルをブロッティングバッファー B液で軽くすすぎ (数分以内)、
PVDF膜の上にセットします。

Blot_7.jpg
6.ブロッティングバッファー C液に浸漬した 3枚のろ紙をゲルの上にセットします。
ブロッティングローラーで気泡をぬき、しっかり密着させます。

Blot_8.jpg
7.ホライズブロット2Mの上部電極板をセットします。

Blot_9.jpg
8.リード線を接続し、
パワーステーションギブリⅠとつなげます。
2mA/cm2で30~60分間に設定し、ブロッティングを開始します。

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動画で紹介

ウエスタンブロッティングの操作方法
パワードブロットエースを使用しています

QBlot  kitの使用方法
パワードブロットエースを使用しています

EzBlotの使用方法
パワードブロット2Mを使用しています